961外伝2 ある師弟の一幕。

ひゅう。 カサカサ・・・・ 
荒野の風は、乾いた空気をかき混ぜ、日中にはその暑さを際立たせ、夜にはその暑さは冗談だったかのような染み入る冷気をもたらす。
日中の暑さに耐えかね、己れを涸らしてしまった草葉や小枝が絡まり、小さなボールのよう。
子供達の戯れと違うのは、転がす者が乾いた風だということくらいか。

そんな荒野の一角に場違い?とも言える明るい場所が。

篝火だけでなく、クリスタルを利用したのか、夜空に光が舞い、とても目立つ。
近くに別荘地もあるのだが、負けないほどの光源。

そして、その一角にて・・・


「わお!すごいですぅ!」
桃色の髪をくくった少女、というか、ララフェルの女性?少女。
「てぃんく的には、花嫁姿のミーランさんも素敵ですが・・・旦那様のミコッテさんもカッコイイですねぇ。」
会場を練り歩く新郎新婦と、テーブルに並ぶ料理の数々。そして、そんなものそっちのけの師のエレゼン。
漆黒な全身がいかにもそぐわないが、お土産屋で手に入れたであろう、ミコッテの尻尾のヌイグルミ(全種コンプリート)を愛おしそうになでているのをガン無視して。
「オスに興味はない・・・・・」と、さらにモフモフと尻尾(ヌイグルミ)の触り心地を楽しんでいる師


なんというか、スパイスの利いた料理は食欲も増進させるらしく、両手に華ならぬ肉を持ち、ララフェルならではの好奇心から、施設を眺めみわたし。
てぃんくは、その一つに目を止めた。
施設のほとんどは調整中、ないしは設置中で楽しめないが、チョコボや、キャリッジらしき物が配置されている円筒を模した館みたいな施設に興味が。
なにしろ、今すぐにも乗れそうな感じだから。
「う~ん。てぃんくは興味深々ですぅ。」
師を見る。変わらずなので、ひょいっと椅子から飛び降りると、彼女はお目当ての場所に駆けていく。
「おや?こっちの乗り物に興味があるのかい?」髪を紫に染めたミコッテの女性。
「はいですぅ!」屈託のない笑顔で。
「じゃあ、ちょっとお試ししてもらおうかね。いい?」
「はい!ですぅ!」
「ビッグス!試運転だよ!」「うおい!姐さん!ウェッジ!いくぞお。」「まかせとけ!」

チョコボの乗り物にまたがるララフェル。
「わおー!」

数周回って、堪能した少女が降りてきて。
「ちょっと目がまわるですぅ・・・・」
「おっと、速さがすぎたかな。」ルガディンの青年。
「はふ・・・え?ルガ・・さん・・」
「おう。ビッグスだ。よろしく!」
(ひっ!)大きな体躯に少し・・・
(ルガさん・・・ララフェルを食べ物にしてるとか・・・)伝説である。もちろん。
「お、ビッグス。怖がってない?その子。」ララフェルの少年?青年?ゴーグルをかけた彼は表情が読みにくい。
「あ、ああ。かな?大丈夫?君。」声を掛けるが、緊張は解けていないらしい。
「ああ、あれだ。都市伝説を信じちゃってるかも。」少女に振り返り「大丈夫。コイツと俺っちは大親友だからさ。」と、左手を見せる。
キシギシ・・・・妙な機械音。
「ほら、この手だって、義手にすれば大丈夫なんだ。右手もね。」ギシギシ・・・
「ひ!」青ざめる少女。
「おたすけですぅ~っ!」走って逃げていく少女。

「コラ!」とミコッテの女性。
「あ、カレン姐さん。ちょっとしたジョークだったんだけどなあ。」
「ウェッジ。やりすぎ。」ゲンコを落とす。栗色の髪のララフェルは頭をさする。義手の形のオモチャを外し、生身の手で。「いてて・・・」


「ししょー!タイヘンですぅ!ララフェルが食料になってるですぅ!」
「ん?」師と仰ぐ「亡霊」ことエレゼンの青年は骨付き肉を頬張って、しかしもう片手では、尻尾のヌイグルミを。
「ひぃ!それ・・もしかして・・・」「ん?」
「師匠までー!」走り去る、てぃんく。

「なんだありゃ?ドードーの照り焼きなんだが・・・」フィズは怪訝そうに。
まあ、いいか。招待されたので、タダで飲み食いできるのはいいことだ。そして、逃げることのない尻尾まで。「イイ!実にイイっ!!」ご満悦であった。


「そろそろ、あの銃をぶんどって、自立すべきかもですぅぅ・・」
多感な年頃なてぃんくでした。

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