670外伝。親子。

こんこん
ノックの音。
ドアから響く音に寝台に横たわる女性は。
「遅いっ!バカ娘っ!」
がちゃり、と開いたドアに向けて枕を放り投げる。
「ぐはっ!」
枕の直撃を顔面で受けた青年は。
「ひ、大丈夫ですか・・・・?」
「なによ、マユかと思ったわ。ノックの仕方が同じなのね。」
「マユがノックしたんですよ。」
後ろから娘が顔を覗かせる。
「ウルラ、大丈夫?」
「ああ、なんとかね。それにしても義母さん、まだ術後3日でしょう?確か10日くらいかかるって聞いたけど・・・。」
「そんな辛気臭いマネ、できるわけないでしょ?」
寝台の女性はあきれたような顔で。
「母さん。冗談抜きで大人しくしててよね。ターシャなんてずっと泣きっぱなしなんだから。」
「それで連れて来てないの?」
「うん・・・。今、社長さんとこに預けてあるの。フネラーレなんて見た瞬間に泣き出しそうな顔になったから・・・。」
あはは!そうね!と笑う魔女。
「で、どうなんです?」夫の心配げな声。
「大丈夫、よ。」魔女は笑う。
が・・・その笑顔が少し無理してるのを娘は見逃さなかった。
「母さん。お願いだからちゃんと治してね。」
「ああ、マユ。先に帰っておいて。父さんを心配させないようにね。」
「うん、わかった。母さんも大人しく治療するんだよ。」
「心配ないわ・・・・。」
糸が切れた人形のように寝台に倒れこむ。
「ちょっ!母さん!」
「待て、マユ。今は静かに寝かせてあげよう。かなりの無茶をしたんだ。」
投げつけられた枕を寝台に、そしてゆっくりと寝られるようにして。
「そうね。おやすみ。母さん。」



その日の午後には閉会式があり、優勝者としてはフネラーレだけが参加して。
「あ~その。僕・・・あああ、そノ、ええと、ありがとうございまス。」
案の定テンパっていた。



「まったく、腕前だけは超一流なのにね。こういう場だとサッパリなのね、あの娘。」
社長は優勝者用のネームプレートと、換金すればかなりの額の宝石を渡しながら。
「人の事は言えないんじゃないのかい?」
黒猫。
「うっさい。あんた程役者じゃないわ。」
「そうかな?」
小声でのやり取りに黒髪の美女はまったく気がつかず、ただオドオドと手の中に在る賞品を見ながら。


「それではこれにて閉会と致します!皆様に感謝を!」
ナルディク&ヴィメリー社の二人が頭を下げ、港まで案内するよう指示を。



「母さん、大丈夫かな?」「ばーば?」「とりあえずは社長達が面倒見てくれるはずだし。報告だけでも家に戻ろう。」「そうね、ウルラ。」




うって変わって。
「ねえ?」ミコッテの美女は双子の、とはいえ二卵性なのでそれほど似てもいない。
妹は寝台で横になり、ゴシップ紙を読んでいる。
政治的なものより、どちらかと言えば噂に毛が生えた程度の、どこの有名人が誰と、的な。
もちろん、今見ているのは、このコロセウムの下馬評だ。
ただ、下馬評のクセに、「かの魔女が!」などと、まことしやかに書かれているあたりがなんともだが。
「あんなの相手にする方が間違ってる・・・」と言いながら、ゴシップ紙を放り。
かつて、対帝国戦での基本戦術を提案し、GC(グランドカンパニー)首脳をすら唸らせた頭脳の持ち主。
天魔の魔女。
「人災(ハザード)って言う方があってる・・・絶対。」
エリスはそんなこんなで、姉、セネリオの方を出来る限り、そう。出来得る限り、無視すると決めていた。
理由は単純だ。「自分が被害に遭いたくないために、姉を生贄にした」のだ。
だが。
「エリス。」姉の冷たい声。
「なあに?」できるだけ。そう。可能な限り。やわらかい返事。
だが。
返ってくる声は、遙か北方にあるという、氷河の如く冷徹だった。
「その、此れはどういう事だ?」
姉の声は心胆を寒からしめるが。
「魔女さんの・・・娘さんよ。」
そんなことは見れば、いや、見なくても。
「何故。私の尻尾を握っている・・・・・?」その表情は、驚きと、恥らいと、耐え忍び、怒りを何処に持って行こうか判らない。と言ったところか。
エリスとしては、すでに経験済みなワケで、この少女はふわふわしたモノが大好きなのだ。
なので。
「このお姉ちゃんは、尻尾をさわられるのが大好きだから。」と耳打ちしておいた。
もちろん、自分に災厄が降りかからないためだ。社長はそのコトを耳聡く聞いていたらしく、速攻部屋から退出していた。
「セネリオ、閉会の文脈は自分でなんとかする。」と、ソレっぽい言い訳をして。
「ひ・・・・ひゃ・・」
少女の尻尾をなぞる手の動きが多少変わったようだ。
普段なら聞くことすら無い声が喉の奥から。
「さて・・・。」
「社長は!」声は裏返っている。
「さっき出て行ったわよ。せねっちと入れ替わり?」
「嘘付け!社長の顔など見ていない。それと、この子に何か吹き込んだな!?」
尻尾の根元から先まで、適度な握力で。
しかも。
着替えの最中だったもので、下着一枚しか身につけていない。
エリスも似たようなものだが、こちらは「上」はつけている。
かなりヤバイ。
「どうして~?」と妹の台詞に、今ここにデュランダルがあれば、間違いなく妹の首筋に突きつけていたであろう。
「以前。」確かに見た。
「お前が、この子に尻尾を好きなようにいじられているのを知っている!   から   だ。」
身長1メートルにも満たない少女は。
好き放題秘書の尻尾を弄んでいる。(あー、やっぱセーフ。)ぴたんぴたん、と尻尾を振りながら、エリスは自身に降りかからなかった災厄に安堵し。
「うぇっ!」
セネリオは見てしまった。
ドアが少し開いている。
しかも、その先には・・・・
「社長!」
あの光彩は間違いが無い。社長だ。
「ひゃぅっ!」
尻尾を握る手が力を変える。
(た、楽しんでやがる!)声には出せない。口を開けば悲鳴めいた声しか出ないからだ。
「ぐ・・。」
(いい度胸じゃないか・・・・。おぼえてろよ・・・)「あぐぅっ!」
ドアの外から。
「ぶふっ!」社長の笑い声が確かに聞こえた。
(限界に挑戦、か。)自分の忍耐、それも2種類もの。いや、警備兵が駆けつけようものなら半裸の姿を晒すハメになる。
3つの忍耐を耐え切って見せる。その後。覚えてやがれ、お前ラ!忍耐の限界に挑戦を始める。


----------コメント----------

670話おめでとーw
リローンチまでに680話までいけるかな?w

社長のとこにターシャ預けてるのかー、ミコッテオンリーの部屋にw
エリスなら良いけどセネリオが(´∇`)モフモフ!されてたら社長爆笑してるよw
Marth Lowell (Durandal) 2013年08月20日 12:46

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そうそう、最終日ナルヴィさんにPvP連行されて逝ってきたw
3人PTで申請してナ槍白白とかになったよw
白2なのに最初に狙われたの自分だったしw

初見って楽しいねw
もう行きたくないけどw
Marth Lowell (Durandal) 2013年08月20日 15:10

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>マルスCEO,実は
ベータ版やってないんです( ;∀;)
なんか、はいれなくて。
PvPね、いいなあw11だとかなり入れ込んだ覚えがw

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「エリス。」
「なあに?」
「その、此れはどういう事だ?」
自身の尻尾をギュムっと握りしめる少女を見て。
「魔女さんとこの娘さんよ。」
見ればわかる
「何故私の尻尾を握っている・・・・?」表情は何かに耐えているようだ。
「さて?」
「社長は?」
「さっき出ていった。ね。せねっちと入れ替わり?」
「嘘つけ、社長の顔など見ていない。それとこの子に何か吹き込んだな?」
「どうして?」
「以前、お前がこの子に尻尾を好きなようにいじられているのを知っているから・・だ。くぅ」
身長1メートルにも満たない少女は好き放題秘書の尻尾で遊んでいる。
しかも
ドアが開いているのが・・・・
(社長、まさか見ていたり?くぁ!)
尻尾をなで回す手の動きが半端なくやヴぁい。
声を出すのをかなりの忍耐をついやす・・・
「いい度胸じゃないか。おぼえてろよ・・・あぐ!」
セネリオは忍耐の限界に挑戦を始めた
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年08月20日 18:01

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>マユリさん
このコメントどうやってサイトのほうに載せようか?w
この日記の文章とつなぎの文を入れてくれればつなぐけどw

てかマユリさんこの日記編集して書き足せば良いんじゃないのか?w
Marth Lowell (Durandal) 2013年08月20日 18:08

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追記
セネリオ怒りの忍耐試験


適当に

そのころ社長の部屋では

とか書いて統合しておこうか?w
10区切りだからこの話でサイトにUPするんだけどw
Marth Lowell (Durandal) 2013年08月20日 18:36

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追記
新生編小説はアーリー24日から?リローンチ27日から?

うまく新生編に移行したいですよねw
Marth Lowell (Durandal) 2013年08月20日 18:40

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>マルスCEO、編集しとこw
アーリーはどうなるかまだわからないから・・・
編集に伴い、本文が多少改変されますよw
コメ描いたのサーフェスで職場からだから、かなり急いだw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年08月21日 00:11

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>マユリさん
編集お疲れ様です、保存しなおしておきますね^^
Marth Lowell (Durandal) 2013年08月21日 07:46

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追記
これは子供の特権だわーw
こんな事したら首が落ちるw
Marth Lowell (Durandal) 2013年08月21日 07:52

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追記
社長はギャザラーの技術であるステルス使って気配消してるんだろうなw
Marth Lowell (Durandal) 2013年08月21日 08:11

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>マルスCEO,そうねえw
セネリオ女史がどのあたりまで耐え切れるか、ちょっと見ものだけどねw
彼女の性格からすれば、最後まで耐え切って迎えに来たマユ夫妻が平身低頭で土下座しまくる、って運びになる予感w
しかも半裸だからウルラは速攻逃げるだろうしwがんばれ、セネリオ女史w
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年08月21日 10:05

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