649外伝。コロセウム 決勝当日

この日。
会場内はおおいにざわめき、売店の売り子達も忙しげにお菓子や飲み物などを売り歩き。
決勝戦。
3日を費やしてお披露目となったコロセウムも今日で終了となる、となれば盛り上がりもひとしおだろう。
何せ、名だたるメンツともいえる、黒猫氏を筆頭に、魔女や亡霊、葬儀屋など。
ふたつ名を持つ連中同士の戦いだ。
会場は否応無しに盛り上がる。

「それでは・・・・・」ウグイス嬢の声が響く。

天魔の魔女、レティシア・ノース・ヴィルトカッツェ。
発火者、アルフレート・ロートス。
葬儀屋、フネラーレ。
悪運、ベリキート・ラピスラズリ。

対して。

黒猫、クォ・シュバルツ。
暴君、マルス・ローウェル。
亡霊、フィズ・ディライト。
左腕、エリス・ローウェル。

名前を呼ばれ上げ、各人は思い思いのポジションに。
戦場については先日からの戦闘で、大体のカンはつかめているはずだ。

「それでは、決勝をはじめまーす。用意!・・・・・スタート!」
歓声が上がる。


「ち、まったく緊張感が無いな、あんな合図いるのかしら?」
レティシアはとりあえずアルフレートとペアを組む。
「まったくだね。」
黒髪のエレゼンの術士は妹弟子の魔女に応える。
「アル、とりあえず黒猫を落としに、と言いたいんだけど、たぶんアイツは一筋縄じゃいかない。時間稼ぎだけお願いしていい?」
「俺だけでか?」
「うん、あたしはフネラーレにくっついて社長から落としにかかる。」
「それはまた。大仕事を任された気分だな。」
「近寄らなければ、多分大丈夫だとおもうんだけど。牽制だけで十分。ただ・・。」
「ただ?」
「もしかしたら銃なんか持ってるかもしれない。」
「おいおい。」
「とりあえず、ヘンな動きをしたら防御術式だけは欠かさないで。」
「ああ。で、いつまで一緒にいる気だ?」
二人は走りながら。
「あたしが黒猫を落としにかかる、と相手に思わせるまで。」
「そりゃまた、難儀だな。俺も居ていいのか?」
「ソコまでは相手も考慮してないでしょ。」




「二人、か。魔女と・・・隠者、いや、発火者だったか。ハーミットとか言わせておいて、一皮剥けばとんだ食わせモノじゃないか。いいだろう。悪夢を魅せてやろう。」
金色の瞳を輝かせ。
漆黒のミコッテは走りだす。


「おい!エリス!」暴君と言わしめた社長が、頼れる左腕に。
「あいにゃっ!」返事が訛っている・・・・
「お前は、亡霊と一緒に葬儀屋を落とせ。」
「ふぇ?」
「いいから、そうしろ。心配しなくてもお前一人でアイツを追いかけろ。勝手に亡霊がついてくる。」
「ふぁふぇ?」
「いいな?私は発火者を襲う。亡霊には最初から銃を使えと言っておけ。」
「ふぁ、ひゃい!」


「エリスさんは・・・居たっ!」社長となんらかの打ち合わせをしていたようだが。
大丈夫。自分が守ってみせる。腰に下げた「復讐者」を手に。
オレンジ色の光、幾何学模様が迷宮を作り始める。


「あノ野郎、何処ダ?・・・ターゲットはしテあるンだ・・・。」
金色の瞳で追いかける。
「居た。」
が。こっちに来る気はないのか、離れていく。代わりに二人。
「ナメやがッテ!」
まずは挨拶に、と矢の雨を降らす。十数本の矢の雨が二人を襲い、その間に社長を追い回す。
「僕かラ逃げ切れルとおもうなヨ。」


「ご主人様。ワタクシはどうすれば・・・・・。」
とりあえずの敵を設定し、追い回すことにした給仕のエレゼン。
亡霊と呼ばれるエレゼンを。彼も確か格闘士だったはずだ。
隣のミコッテもおそらくそうだったはずだ。
が。
問題ない。
なぜなら・・・・・。




観覧席にて。
「社長っ!マズイです!・・・・くっ!」
展開される戦場では、セネリオの思い描いたものとは違う展開が。
「魔女・・・・・まさか社長から落としにかかるだとおっ!」
発火者と一緒に黒猫に襲い掛かるように見せかけて、社長の後ろを取りに行っている。
しかも、葬儀屋がエリス達をかわしながら社長の元に行っている。二人で挟撃する気だ。
社長はそのことにまだ気がついていない。
悪運を探しているのか、少し周りに警戒しながら小走りに動いているが・・・・
完全に相手のペースに乗せられていくのが解かる。
「くっそ、あの・・・。」迷惑来訪者、とはよくいったものだ・・・・


「葬儀屋め・・・何処にいきやがった・・。」
ひゅん。
目の前を矢が通過していった。
そちらを見るが、誰もいない。
が。
こんな芸当ができるのは一人しかいない。
腹心の参謀からは「悪運」から、とは言われたが。やはりこっちが先に来るだろうと思い、先手を打ちたかったのだが。

「今のハ、ご挨拶だヨ。」どこかから声がする。
その声は、妙なイントネーションを伴ってはいるが、鈴の鳴るような可憐な声。
だが。
「次は射抜くネ。」
物騒この上ない台詞。
綺麗な音だけに、そのギャップが・・・
「ち、エリスに亡霊め、きっちり仕事しやがれ。」ぼやくが、今更だ。


「エリスさ~ん、何処いきますか~?」
「ついてこないでえええええ!」

もちろん、こんな大声出していれば相手に筒抜けで。
後ろから、給仕娘が接近しているのがまだ判らない・・・・・・・・


----------コメント----------

ひだりうでえりす??
って、おぉ! エリス、自分にふたつ名ある事、これで知ったのでは?!
Ephemera Mitoa (Durandal) 2013年07月28日 12:55

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>えふぃたん、実はw

先の話しでマルス社長の両腕、としてセネリオが「右腕」エリスが「左腕」
と。盾と知略のセネリオ、攻撃力のエリス、というところかしら。
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年07月28日 13:03

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あ、うん。「決闘! マルスVSクォ」って話を読んで、両椀の事は承知してましたよ。読者としてはね。
キャラとしては、「ひだりうでえりす?? ってどういう意味だろう。(左腕を想像し、そこにエリスの目鼻口、耳しっぽ生やした絵を想像)・・なんちゅう生き物だっ!? ぶんぶん(首を振る)」
とかやってるんだろうなって思ったのです。
ま、そう言った意味では、エリスが「ふたつ名欲しいな」だなんて思ってた事をエフェメラは知らないのだけど。
自分を紹介される時にふたつ名付きで呼ばれたみたいだから、エリス、喜ぶんじゃないかなって思った次第です。
Ephemera Mitoa (Durandal) 2013年07月28日 14:17

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>えふぃたん、にゃるほどにゃらるとほてっぷw

おそらくはw
かなり喜んでるのでは。
ただ、ウグイス嬢がそうアナウンスした背景には・・・。
わかりますよね?w
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年07月28日 14:56

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うん、わかってるw (読者として。)
Ephemera Mitoa (Durandal) 2013年07月28日 15:36

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>えふぃたん、さすがw

さて、この戦場はどうなるかしらんw
もうしばらくお付き合いをw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年07月29日 15:30

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これはエリス嬢を追いかける試合。
Fizz Delight (Hyperion) 2013年07月30日 00:09

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>フィズさん、さすがですw

もはや相手ではなく、エリス嬢の尻尾しか見えてないのかもw
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年07月30日 03:41

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