630外伝。コロセウム 夜会2

「あれ?ターシャどこいった?」
ブルーグレイの髪の女性はキョロキョロと。
愛娘を探す。
あの子は少しでも気を抜くと、とんでもない事をやらかす。
まさか・・・。

ぽん、と肩を叩かれ、それが夫だと分るとつい・・・
「もう!ターシャがまたどっかに行ったの!ウルラもちゃんと見といてよっ!」
小声ながら、声は子を思う母ゆえに必死だ。
だが
「マユ、落ち着け。さっき義母さんと一緒にスウェシーナ隊長と歓談してたよ。」
「げ?どんだけ母さんになついてるのよ、あの子ったら。」
「まあ、まあ。」手で抑える。
妻は小柄な少女の面影、というか、出会った頃とほとんど変らない面立ちだが。
少しお腹が大きくなったせいで、イブニングドレスみたいなスラり、としたドレスは着れないが、その分、ふわふわとしたドレス。
髪に合わせ、淡いブルーが良く似合う。

「これがな、傑作なんだ。」クセのある金髪を短くした青年、ウルラは妻を相手に我が子の武勇伝を。
「あの隊長を凹ませたんだ。いや、正直横で見ていて爆笑しかけたよ。」くっくっくと殺した笑いを。
「な、何やってんだ、ターシャ!もう!母さんも!」
「まあ、いいじゃないか。マユ。大声は禁止だぞ?それにせっかく義母さんが面倒見てくれてるんだ。ゆっくり二人、いや、三人の時間を過ごすとしよう。」
「・・・・そうね。」寄り添う妻。



「ユパ。」
黒髪の術士。
「おう、アル。」
赤銅のルガディン。
「お前、あっさりやられたな。」
「言うな、それならお前もだろう?おいらは相手が悪かった。」
「ソレをいうなら、俺だってな。アレは反則だ。」
「水晶の魔力、か。確かにとんでもないな。だが・・。」
「ああ。黒猫もヤバイ奴だが。その水晶の攻撃を避けきったレティは、それこそとんでもないよ。」
「確かに。お前の妹弟子だっけか?」
「ああ。期間としては短かったけどな。」
「さすがのふたつ名だな。魔女、いや、対戦したくない相手、という意味じゃあ、迷惑来訪者、かね?」
「今のところ、人災、かな?」苦笑。
「ところで、だ。黒猫氏の、もう一つの呼び名、って知ってるか?」
「いや・・。それが?」怪訝なエレゼンの術士。
それを見て。
「誰も知らないんだよなあ・・・これが。」剣聖は。
「それは・・・気味が悪いな。あの腕前で何かふたつ名があってもおかしく無いだろうに・・。」
「ソコだな。決勝では気をつけろよ。「何か」ある。これは、剣聖としてのカンだ。」
「そうか。ありがとう。ユパ。ところで俺の娘はどうなんだ?」
「十分以上にやっているよ。相棒にも恵まれてな。」ニヤリ。
「そうか・・・。」安堵する・・・



「あー、もう。これは・・・不可(そぐわず)」
長い黒髪は束ねられ、背中に一条の流れを作る。
対戦用の着流しではなく、社交場用の着物を身に纏った少女は、紅い瞳を潤ませ。
場の空気としては、なんというか。
「・・・不合(あわず・・)」とこぼす。
周りには、同じく黒髪の葬儀屋並に男性陣に囲まれ、質問攻めに。いわく、その剣術は?出身は?など。
しまいには身体のサイズにまで話が及び、睨んで撤退させた。華奢なわりに出るところは出ているのである。
その点では、葬儀屋に勝った、と思いたい。服装の派手さは負けているが。
つい、佩剣、天の村雲を抜きそうになったが、もちろん佩いていない。
「・・・もう!なんなのよっ!」と、群がる男達を退け、料理に向かう。
「食べるしか楽しみ無いじゃないっ」
黒雪、と呼ばれる少女はとにかく料理を皿に・・・・



「ね~まなん、負けちゃったね~。」「いうな~。」「ワシがおれば・・・」「なに?このカボチャ。」
「蹴って。えらっち。」「え~。こはくちゃんが蹴りなよ~。」「いや、触ったら伝染りそう。」
「さっき、めっちゃ蹴ってたのに~。」「熱湯消毒した後だから、大丈夫っておもった。」
「あれって、やっぱり?」「反省水。」「なんか適当っくない?」
「ワシ!死ぬ!って、本気で思ったんじゃよ~?普通、アレかけるのかの~!?」
「だって、カボチャだし。」「死ぬ以前にカボチャだし~。」「ゆでると美味しいよね。」
「蒸す方がいいわよ~」「じゃあ、あれだ、なんかカンに放り込んで、みんなでフレアしようぜ。」
「まなん、さすが!」「それ、おもしろそう!」「でしょー?」「ワシ・・・・・寿命ってあるのかじゃの~・・。」


「む~う。」
オレンジの髪のミコッテ、シャンは一人はぐれて、義母であるところの隊長、スウェシーナを探してはいたのだけど。
既婚者、という証のリングを見せ付けながらでないと、なかなか男性陣は通してくれない。
少々、辟易しながら「ネルケも連れて来ればよかったにゃ・・・。」と独り言。
軽めの素材を使った、控えめなオレンジ色のドレスの彼女は、確かに少々目立つ・・。
そこに、漆黒の紳士が。

「やあ、お嬢さん。あちらに行きたいのかな?自分でよろしければ、エスコートさせてください。」

え?

右手を差し出され、頭を垂れるミコッテの男性。
もしかして・・・
黒猫・・・?

顔を上げた青年は、金色の瞳を和らげな光に変え。
「どうかしましたか?」と。
「いえ・・・。」としか、応えられない。
その先には隊長と魔女が歓談している場がある。これ以上他の面倒な男達に言い寄られるよりは、はるかにマシかと。
その手を取る。
「では。」
華麗な動きでエスコートを。
(ヤバイにゃ~、ネルケでもこのくらいはして欲しいにゃあ・・・)


「クォ!お前っ!」
目の前まで来た時に。
天魔の魔女は、本気で怒りを覗かせる。
「まあまあ、道に迷った子を送り届けに来ただけ、です。そう。せっかくですし、レティシア・ノース。ご一緒に歓談いたしませんか?」
黒猫は誘う。
「オマエな。抜けてるだろ?ヴィルトカッツェの家名が!」
「おや?失礼。」
「分ってて、だな?」
「貴女でも個人的な部分では感情的になるんですね。先の隊長みたいに。」
「ああ、そうだよ。文句あんのか?クォ。」

「ちょっと、シャン、ターシャ連れて。」スウェシーナが娘に。
「うん・・。」「うん?」

「穢していい所とダメなトコロの線引きはできてるつもりだけど?」
「逆鱗にふれちゃいましたか?」
「十二分にね。」
「それは失敬。決勝の舞台で晴らしていただくとしましょう。」
「お前の駒として動いてた時もある。だが。お前じゃなく、妹の頼みで動いていたのも覚えておけ。」
「この辺でお引き取りくださいませ。魔女様。ご主人様が不快に思われます。」
「ベッキィ!」
「大声はご法度でございます。どうぞ、お静かに。」
「夜会はまだ時間がある。ゆっくり楽しんでいってくれ。天魔の魔女。」


----------コメント----------

普通に喋る事できないのか 訛り?みたいなもんなのかわからない!
少女・・・?少女ってことは⑩台だー(∩´∀`)∩
Rapu Taro (Hyperion) 2013年07月10日 02:29

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>ラプ(黒雪)さん、そうですねえw

訛り、というか、キャラごとにある程度の「台詞の個性」をもたせています。
一人称が「あたし」や「わっち」「ワタクシ」レティ、ショコラ、ベッキィみたいな。
その中で、剣術を東方で極めたサムライとなると。「刀語(西尾氏作)」のキャラ、左右田右衛門左衛門(そうだえもんざえもん)の台詞がしっくりくるかしらとw彼(もちろん男)は、
無口なんだけど、なんでも「不~(~ず。)」みたいな独特な感じ。で、サムライを標榜している黒雪嬢もこういうイメージかな?なんて。
東方で暮らしていた、って設定だから、訛り、になるのかしらねw

そして十代後半の設定は、イラストを拝見して「うん、十代」とw
新生になれば、二十代になっちゃいますけどねwww
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年07月10日 07:07

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