587外伝。コロセウム建設 三

とある日から数日後。

「ね、セネリオはどこ?」
オフィスには観葉植物がいくつか飾ってあるせいか、空気は心地よい。
「あ、社長。セネリオ女史は今朝早くに急用ができたと、港の方に行かれましたけど。
「ふうん。センちゃんったら、いっつも私に隠れてイロイロしてるんだから。」
「社長、それは社長に負担をかけないようにと、お気遣いをしてるのでは?」
「つまんなーい。」
「まあまあ、そろそろ昼食の準備にかかりますけど。何かリクエストあります?」
「トンノのグリエ、ハーブ添え。ビシソワーズ。チョココルネ。」
「チョコ、ですか。」
「うん、ちょここるね。」
「わかりました・・・・。」退出する次席秘書。

「は~ぁ。センちゃん、何やってんだろ・・・。」
食事のお呼びがかかるまで、窓を開け潮風を受ける。

その頃。

「おい、そこの可愛い子猫ちゃんよ。ウチの船になんの用かな?」
水夫、といえばそうかもしれないが、纏う空気が一般の水夫とは違う。
だが。
その「子猫ちゃん」もただの子猫ではなかったようで。
「カピタンにお話が。ご案内願えますか?」
「船長はお忙しい。子猫ちゃんとじゃれてる時間はねえよ。おいらなら相手してやるぜ?」
「どけ。虫けら。」
「あ?ンだとおっ!」斧に手がかかる。
じゃりん。
直剣が目にも止まらない速さで抜刀され、男の喉元に突きつけられる。
「子猫、ではない。セネリオ・ローウェルだ。バデロン殿より、カピタンへの紹介状を頂戴している。
ゴネるならこのまま右手を真っ直ぐに突き出すが。依存ないな?」
「わ、わかった・・・から、早く剣をしまってくれ・・・。」
「まずはお前の斧からだろう?」
「ああ、そうだな、わるかった・・・よっ!」ぶん!斧を振り回す。
「トロいな。あたるわけ無いだろう?悪かった、訂正しよう。お前は虫けらではない。虫の方が速い。虫以下だ。」
剣の横手で頬を打ち、さらに膝蹴りを股間に叩き込む。鉄板の膝あてがめり込み、男は悶絶して崩れ落ちる。
「時間を無駄にした。誰か、他にいないか?」


船長室にて・・・
「で、下っ端どもをなぎ倒しながらここまで来た、ということか?」
「大変ご無礼を。船長フィルフル。」
「いや、あいつらも最近たるんでおったからな。いい機会だった。で、肝心の用件とやらは、オレを満足させるに足るのかね?」
「おそらくは。」
「ふん、聞かせろ。」
「はい。この度、コロセウムを外洋にて建設するプランがあるのをご承知と思われますが、当社アリティア産業もこの事業に参入いたしております。
つきましては、海運の手筈なども行っておりますが、海賊に襲われては被害甚大でございます。」
「で?」
「はい。アスタリシア号船長、フィルフル殿のお声があれば、そのような被害には遭わなくて済むかと思い、一声頂戴しに参りました。」
「で?」
「はい、わたくし共の船団に是非ともご好意を賜れればと、あつかましくもお願いにきた次第です。」
「なるほどな。アリティア産業の船には手をだすな、と。」
「はい。我が社の船には、どうか手心を。よしなに。」
「そういえば、他にもコロセウムの物資を運ぶ会社などあったかな?」
「いえ、存じ上げません。」
「そうか、なら普段通りの営業でいいかね?」
「はい、ありがとうございます。」
「マルス社長によろしくな。」
「はい。では、失礼致します。此度の差配、ありがとうございます。」一礼。


退出するのを見届けてから。
「なかなか、したたかだな。どう思う?副長。」
「ええ、そうですね。ファルベ社の件はどういたします?」
「なに、あちらも何か手を打っているだろう。商船、とは名ばかりの武装船などゴロゴロと。前にもやられたからな。覚えているか?」
「はい。あの時は・・・フネラーレの機転でなんとか逃げ切れましたが。」
「まあ、アスタリシアを出すまでも無いだろう。適当に駒を進めておけ。運よく仕入ができたら、一割だけでいいと言っておけ。」
「はい、カピタン。」




執務室にて・・・・
「海運の方はまだしばらくかかるか?」
「はい。準備の方は滞りなくできておりますが。物資の到着待ち、です。」
「今回はしてやられたな。」
「そうでございますね。」
「まさか、5割の自社持ちと、アリティアの持ち株で6割の共闘とはな。まあいい。
こちらも株式で鉱石、及び資材を買うと伝えろ。もうあそこの株は2割もあれば十分だ。」
「は。」
「さて・・どうやって仕返ししてやろうかな?」ふふ。イタズラめいた表情。
「クォ様。またそのような・・・。」
「いいじゃないか。このくらいの楽しみは人生には必要だぞ?」
「ですが・・・。」
「我が不肖の妹なぞ、まさしく堪能しているじゃないか。ベッキィの報告だと我が世の春を謳歌しているとか。」
「フュ・グリューンお嬢様は・・・確かにご自由を楽しまれるお方ではありますが・・。」
「アドルフォ。俺も少しくらい楽しんでもいいだろう?」
「は・・。ですが、程ほどになさいませ。」
「わかっているさ。」



そして、時は流れ。
いよいよ、コロセウムのこけら落としも間近、という時。
招待状が配られる・・・・。

一通は魔女の元に。
一通は亡霊の元に。
一通は・・・・・・・・。

大会が、始まろうとしている。


----------コメント----------

「×子猫 ○虎」

チョココルネw
Marth Lowell (Durandal) 2013年05月19日 08:54

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フネラーレの機転、がわかるw 読み返して良かった。嬉しい。
Ephemera Mitoa (Durandal) 2013年05月19日 09:09

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>マルスCEO、もちろんw
子猫扱いしてるのは海賊さんだけw
虎としての自負を無くすようなセネリオさんではw

チョココルネは・・・・あたしの好物でもありますwww
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年05月19日 09:11

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>エフィたんw伏線は繋がっていますw
伏線を張る甲斐がありますw喜んでいただけて、あたしも嬉しいよ!
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年05月19日 09:15

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ついに社長も参戦?ねぇ参戦?
煙草?葉巻?ふかしながら待機してる絵が見える。
Fizz Delight (Hyperion) 2013年05月19日 14:45

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>フィズさん、煙草かこいいw
社長はおそらく・・・・・・な展開w
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年05月20日 12:14

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>マユリさん
おそらくって何にゃ~><
Marth Lowell (Durandal) 2013年05月20日 17:59

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>マルスCEO、おそらく、はおそらくDEATH
おたのしみに~w
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年05月20日 19:43

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