577外伝。黒衣森の少女 二人。

リムサ・ロミンサ
白亜の塔のような尖塔を、崖に乱立させてその威容を海から来る客に誇っているような、自慢しているような。
しかし、見た目は綺麗で豪華でも・・・街の中の半数近くが「海賊」を生業としていたりとする、かなり荒くれ者の街でもある。
そんな中にも高級住宅街もあり、セレブな家庭もいくもある。
そして、そういった人々が海賊船のオーナーだったりすることもあるのだ。

そんななか。一軒の家の中では。
「まったく・・・お見合いなんて・・・。」
グローリャ家の一室で一人の少女が悶々としていた。
薄いグリーンの髪を肩のあたりまで伸ばし、華奢だが豊かな胸と整った顔立ちは、良家のお嬢様という印象を誰が見ても納得するだろう。
そろそろお年頃とあって、親からこの話が舞い込んできた。
もちろん、相手も名の通った良家で、評判も悪くはない。同じエレゼンだし子供にも恵まれることは間違いなさそうだが。
とはいえ。
お家同士の都合で嫁ぐなんて、まっぴらゴメンだ。
カテリナ・グローリャは憤懣やるかたなし、というところで。
声が。ついでノック。
「リナ、先方さんがお越しになったぞ。挨拶にでておいで。」
父からの声に、溜め息ひとつ。
どうしよう?

ふと名案が。
とりあえずは挨拶だけして、そそくさと退散して・・・
何処か旅行に行くと称して、そのまま逃げる。
「そうだ。家出しよう。」
親との折り合いもそんなに良くはなかった。
なにしろ、物心ついた時から、「あれをしなさい、これをしなさい、やってはいけない。」
そんな雁字搦め教育だったが、ある日外で友人ができてしまった。
一般家庭の友人は、そんなカテリナの生活に憧れながらも、「僕はイヤかな?」と笑っていた。
そして、そんな彼とは恋仲になり、将来を約束したのだ。
そういった友人と遊ぶ事も厳禁と言い渡され、酷く落ち込んだものだ。
このカタ苦しい生活が段々イヤになってきたところに、親の都合で結婚なんて。
わたしの人生は何処にあるの?
問いかけは歳負うごとに、増えてゆき、今回の見合い話でとうとう、堪忍袋の緒が切れた。
問題は素直に出させてくれるか?だが、ウルダハに親戚が居る。そこに行く、と言えばいけるか。さて?

「なに?ウルダハの親戚の家まで行きたいだと?なんでだ?」
「今回のご挨拶で、ちょっと相談に乗って欲しいかなぁ、なんて。」
「そんな事はしなくていい。先方さんはお前の非礼があったにも関わらず、大変好意を示してくださった。後は式の日取りだけだ。」
(なんてこと・・。勝手に決まってる・・・・それに、どうせ向うの男もわたしの容姿しか気にしてなかったようだし・・。)
「そ、そうなの?」内心を悟られないように。
「そういうことだ。安心して待っていなさい。」
父との会話で確認できたこと。それは、逃げるなら急げ、って事だ。
「わかりました。では、ドレスの見繕いに行ってきます。」
「む。そんなもの買いに行かせればいいではないか。」
「やはり人生の晴れ舞台ですし、自分で決めたいのです。それに採寸もありますし。」
「そうか。では誰か一人つけよう。荷物持ちもいるだろう。」
「わかりましたわ。お父様。」
(よし、第一関門クリア。あとは使用人しだいね・・。)

部屋にもどり、準備を進める。手持ちの路銀はすべて詰め込み、換金できそうな小物なんかも。
行く先はウルダハ。
グリダニアはさすがに行く手段がない。
その点ウルダハは港からザナラーンまでの直行便があるし、
その町からチョコキャリッジという乗り物がウルダハまで直行している、と誰かから聞いた。
その時。
「お嬢様、準備ができましたらベルでお呼び出しくださいませ。」
使用人の足音が遠ざかる。
かくして、カテリナの逃走劇が始まる。
(彼との待ち合わせまではもう少し・・)

その頃。ウルダハでは。二人の男が酒場クイックサンドで酒を飲んでいた。
「なあ、ヴォルフ。なんかいい話ねえかな?」
真っ黒な髪を少し長めに伸ばし、無精ヒゲの青年は向かいに座る相棒?に。
「ハウンドよぅ、あればとっくにやってるての。」
少し浅黒い肌、金髪の青年はそれだけ言うとグラスを煽る。
「それもそうか。で、これから?」
「とりあえずリーヴでもしてくるわ。お前は?」
「もう少し飲んでる。」
「そうか、ほどほどにしとけよ。」
「お前も気をつけろよ。」
拳をこん、と突合せた後に別れ。
「さてと・・どうしたかな?」暇をもてあますハウンドと呼ばれた青年。
ぷらぷらぷら
大通りを当ても泣く歩いていく。


リムサの商店街。ここは実は港に最も近い場所でもある。
そこで「彼」アンドレアと待ち合わせをしてたのだ。
カテリナは、まず服をいくつか買い(財布は使用人から)、大きな荷物にさせて、それから女性下着の店に。
使用人もさすがに入りづらく、外で待つとの事。
(上手くいった!)心の中で喝采を。
そして、裏口から出させてもらうと、待ち合わせの場所に。
すると。
「お嬢様。このような不埒者を見つけましたぞ。」私兵の警備主任
それはまさしく彼。
「なっ!」驚きのあまり、声が継げない。
「いえ、この者は以前お嬢様をかどわかそうとしていたのを見た事がありまして。」
「ちがう!そんなことはしていない!」
「そうよ!アンドレは悪いことしてないわ!」
「では、何故お嬢様は使用人を振り切ってこちらに来たのですか?」
「そ。それは。」
「僕達はウルダハまで行くんだ!それのどこが悪い!」
「おやおや。誘拐を自白しましたね?おい!引っ立てろ!誘拐犯を捕らえた。ご主人様にも報告だ。」
「や、やめてえ!!」
「お嬢様。これで安心して眠れる夜が来るでしょう。ではお屋敷に帰りましょう。」
・・・・・・うっ・・・・ぅ・・・
嗚咽・・・・・・

翌朝、彼が簡易裁判で有罪の上、奴隷商に売られたことを教えられた。
「わたしの馬鹿・・・・。」その日は一晩中泣き続けた。部屋からも出してもらえず。
そして。「彼を取り戻しにいく。」そう決意する。
奴隷といえば、ウルダハあたりだろう。やはり。
覚悟と決意を胸に秘め、カテリナは準備を進める。
軟禁されている、ということは中で何をしていてもそう簡単にわかるはずもない。
そう考えて、ドレスの中から革鎧とトラウザ、ブーツを取り出し
(先の買い物でドサクサ紛れに買っておいた。ウルダハでひらひらなんか着てたらイイカモだ、と聞いていたから。)
なんとか着替える。
ついで、シーツを破って繋ぎロープにする。窓の外を見る。3階が自室だが、どれくらい長さがいるだろうか?
とりあえずできるだけ繋いで、重たいベッドの足に何重にも括りつける。
「よし。まっててねアンドレ。」
月影が少女の髪を銀から薄緑えと変えていく。

これからが少女の冒険なのだ。


----------コメント----------

若い男の奴隷・・・
グレディエーターとかかっこいいと思ってしまう(*´ω`*)

そっちじゃないかw
Fizz Delight (Hyperion) 2013年05月04日 10:21

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そして伝説へ。。。みたいなw
Sanshi Katsula (Hyperion) 2013年05月04日 14:17

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>フィズさん、だったらいいのにね~
前回のお話の「前」の話ゆえ、オチはすでに・・・・
ま、採石場あたりでしょうかね
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年05月04日 15:28

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>三枝師匠。前作をどうぞw
これは「あくまで補完」のお話ゆえ、ハッピーエンドには絶対になりません・・・・
Mayuri Rossana (Hyperion) 2013年05月04日 15:28

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こんばんわ、「いいね!」を入れてくれてありがとうございます。
Queen Alutemis (Hyperion) 2013年05月05日 00:07

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>くいーんさん。いらっしゃい♪
いえいえwこちらこそ、コメありがとうですw
またどうぞ~w

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